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調査研究論文の要旨

 

EUにおける中小企業と金融の動向

  • 中小企業は主要先進国のいずれにあっても経済社会で枢要な地位を占めており、その重要性は論を待たないが、特に日・欧(EU)では雇用者数シェアが約70%を占め、米国(49.1%)に比べ、その存在感は際立っている。
  • このような状況を踏まえ、EUは「雇用と成長の源は中小企業にあり」と考え、「2010年までに世界で最も競争力があり、ダイナミックな知識基盤型経済にする」(リスボン戦略)ためには中小企業の強化が必要不可欠であるとしている。
  • しかし中小企業は、その本質から生じる様々な脆弱性、とりわけ財務基盤の脆弱さが、企業の存続、発展にとって致命的となっており、EUは中小企業支援の主な優先事項の一つに「金融へのアクセス改善」を掲げ、創業や中小企業の発展にとって極めて重要なものとして認識し、加盟各国に中小企業への円滑な資金供給を求めており、各国にとって中小企業金融は重要な政策課題となっている。
  • EU主要加盟国の現状を見ると、中小企業向け融資の推進のために創設されたCODEVI制度が十分に機能せず議会において民間商業銀行への批判が高まったフランス、企業規模が小さいほど信用供与枠の縮小を経験し大きな影響を受けたと言うドイツの調査結果、地元金融市場により中小企業の財務構造や借入れ能力が規定されるとの指摘がされるイタリアなど、中小企業への資金供給が必ずしも円滑ではないことが指摘されている。
  • 現在EUは、数次にわたるMAP(中小企業多年度計画)の策定やMAPを補完し現在は中小企業政策推進の目標となっている欧州中小企業憲章の制定、更にはEU産業の国際競争力強化のために、中小企業への国家による支援(助成)を例外措置として認めている点などに中小企業重視の思想が如実に示されている。
  • こうした中で、中小企業への加盟各国固有の公的融資は、傾向としての絶対額の減少は認められるが、特定分野について増加している場合もあり、全体として相応の水準は維持していると考えられる。また、この各国固有の公的中小企業金融融資金額の減少は、EUの融資機関であるEIB(欧州投資銀行)等へ資金を集約・収斂していることによる影響もある点に留意すべきである。
  • 中小企業金融においては、創業やベンチャー融資が重要であることは疑いないが、それと同様に、或いはそれ以上に、多くの既存中小企業に対する金融の円滑化は極めて重要であり、EUで言う「中小企業の金融アクセス改善」は、まさにその事を指している。
  • 中小企業への資金供給は如何にしたら円滑に行えるのかと言うテーマは、万国共通の課題となっているが、EU及び主要加盟国における中小企業の金融円滑化への努力の動きの中には、新設企業のみならず既存中小企業に対する資金供給のパイプを制度的に確保して行こうとの考えが窺われる。
  • こうしたEU域内における法制の混交は、組合員、事業執行者および第三者の権利と義務が不明確になるため、国境を超え或いは域内で効率的な事業活動を行う協同組合にとって障害となる。こうしたことが、欧州協同組合法(SCE法)を制定し、協同組合政策を推進する環境整備を図る背景・理由となっている。
  • そこには、中小企業経営について単に生産性や収益性が低いとの理由で資金供給を停止したり縮小しようとするのではなく、少なくとも企業を存続させ発展させようとする意思と意欲を有する中小企業に対し、金融面から支援するとの政策意思が明確に感じられる。恐らく、その背景にはEUの基本的理念である結束cohesion、すなわち経済的社会的格差をEU域内において排除しようとする精神に加え、前述したEU社会モデル構築のために策定したリスボン戦略の実現、すなわち「2010年までに世界で最も競争力があり、ダイナミックな知識基盤型経済にする」には、成長と雇用の源である中小企業の潜在力を活用することがEUの競争力を高めるために必要不可欠である、とする中小企業の重要性認識の強さ・深さに依拠するものと考えられる。
  • 中小企業とは如何なる存在なのか、経済社会において如何なる役割を果たしているのかまた果たすべきなのか、をしっかりと位置付け、そのうえで中小企業への円滑・適切な資金供給を企業政策の優先課題と捉えているのが現在のEUである。

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