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調査研究論文の要旨

 

日欧米における企業家精神と創業及び支援策

  • 我が国は企業家精神が乏しく創業活動が不活発な結果、開業率が米国等に比べ大幅に低いとして、多くの人々が日本経済の将来を危惧している。 しかし重要なのは、企業家精神あるいは起業活動水準の強弱が経済活動に如何なる影響を、どの程度与えるのかの検討・吟味であり、それらの強弱が経済活動にマイナスの影響を与えているのであれば、如何なる手立てが如何なる理念のもとで実行されるべきなのかであろう。
  • 我が国では、廃業が開業を上回る状況が1986~91年以降定着した。この結果、年平均開業企業数を同一期間の期首企業数で除し算出した開業率は長期低下傾向にある。
  • 米国においては、創業が閉鎖を常に上回り順調に雇用企業数は増加を続けてきたが、1995年をピークに増加の勢いが弱まり、2002年には創業数と閉鎖数が逆転して実質マイナスとなった。一方、民間労働力に占める自営者の割合(=自営比率)も、1993年以降低下の一途を辿っている。
  • EU主要国であるドイツにおいては、1998をピークに過去数年続いた創業数の減少傾向は、2003年に至って漸く歯止めがかかり、直近2年間の創業においては、失業を回避するための起業が急速に増加し、企業設立者の半数を超えている。フランスでは、2003年に成立した経済活性化法、いわゆるデユトレイユ法の影響もあって起業数、及び廃業を差引いた実質設立数が増加し増勢を続けている。英国においては、VA(付加価値税)登録企業を見みると、1995年を底に1998年まで増加傾向であったが、以後2001年まで減少傾向に転じた。ただ、創業率はほぼ10%前後と安定した推移を見ている。
  • EUの創業推進施策を見ると、我が国と異なり、若年者や女性などの通常の起業者だけではなく、失業者、障害者にも目配りが利いているのが大きな特徴と言える。また欧州中小企業憲章では、起業を生み出す企業家精神 entrepreneurship を促進するには、「企業家精神の涵養」と、「安価で迅速な起業」が重要であるとし、加盟国が速やかに政策を実施するように求めている。ドイツ、フランス、英国とも、そうした方針に対処すべく、起業環境の改善に取り組み相応の評価を得ている。
  • どの国にも潜在的な起業者が存在するが、そのうち現実にどの程度起業者になるかは、社会風土(例えば起業動機・理由など)、制度・政策環境に左右される。我が国における起業は、経済的な動機よりも「自由に仕事をしたい」と言う人間的な動機から発している。EUにおいては、起業し危険を冒すことに抑制的で、起業者になる第一の理由は、「自立」或いは「自己実現」であり、その割合は77%と米国の21%に比べ非常に高く、起業が収入動機によるものではない。これに対して米国では、企業家精神が衰えつつあるとの指摘があるとは言え、企業経営は社会で成功するための最良の方法のひとつであるとの認識が圧倒的である。 
  • 日欧米の企業家精神、創業の現状は一様ではなく、必ずしも金銭的報酬が起業動機になっている訳ではない。 したがって、起業を促進するには、各国それぞれの精神風土に合わせた施策を実行するべきであろう。むしろ報酬動機が過度に強調されれば、起業促進が結果としていわゆる拝金主義を社会に蔓延させるのではという危惧も生じる。 我が国においては、自己実現のための起業を訴え、結果として経済の活性化と雇用の確保に資する起業促進策が望まれる。
  • 近年、大学ばかりでなく初等中等教育の現場にまで起業や金融に関する様々な教材・情報が持ち込まれている。創業、起業が一国経済に与える影響は大きく重要であるが、児童・生 徒・学生に対し起業についての教育を行う際は、起業による経済活動が金儲けだけのためのものではなく、自己実現の機会、場であり、その活動を正当に行うことによって社会に貢献できることをまずは認識させるべきであろう。

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