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調査研究論文の要旨

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金融環境の変化と中小企業

  • わが国経済は、1991年の「バブル」崩壊後の長期低迷を脱し、2002年以降、輸出主導で景気回復に転じた。景気拡大期間は「いざなぎ景気」を超え戦後最長を記録、企業も増収・増益基調が続き、まるで「バブル」崩壊の後遺症などなかったかのような印象を受ける。しかし、少子・高齢化社会を迎えるなかで、経済・金融などの企業を取り巻く経営環境、とくにあまり分析されることのない企業金融に、まったく問題はないのであろうか。
  • そこで、第I章では、マクロ面から経済・金融の抱える構造的な問題を洗い出した。この結果、人口増加率鈍化を主因に経済成長率が低下し、企業の経営環境は大きく変化している。このようななかで、財政政策は抑制され、金融政策は効果が薄らぎ、有効 ・適切な景気浮揚策の発動は難しくなっている。また、高齢化による家計の貯蓄率低下で資金循環構造が大きく変化、企業の資金調達環境は不安定化し、金利上昇リスクが表面化するなど、経営リスクは全般的に高まっている。
  • 次に、第II章では、企業金融を担う金融機関について分析した。最近の収益回復は、金融緩和策やリストラによる職員削減に大きく依存し、経営体質の改善はほとんど進展していない。ともすると従来からの量的拡大路線に走り、どのようなターゲットを狙い、どのようなタイプの経営戦略を選択するのか、不明確である。したがって、今後、企業への安定的な資金供給の使命を果たすには、独創性の高いビジネスモデルを確立し、加えて地道に信用リスクへ対応するなど、強固な体質に生まれ変わることが必要である。
  • 第III章では、企業金融を分析したが、大企業は金融機関離れが進展、資金調達の多様化・強化が図られている。一方、中小企業は借入金に大きく依存し、金融機関次第の不安定な資金調達構造や、金利上昇リスクに対する脆さ、などは未解決のままである。金融機関の量的拡大路線が継続されると、借入額の小さい中小企業は選別される恐れが強い。このようななかで、「貸し渋り」が再発した場合、政府系金融機関の民営化や整理・統廃合から、政策に多くを頼ることはできない。
  • 最後に、第IV章では、中小企業の金融戦略について考え、提言した。まず、資金運用を効率的に行い調達に余分な負荷を掛けないことや、企業情報の公開を提言した。 また、資金調達面では、株式の上場基準の緩和や新しい金融商品が登場しているものの、利用は一部の中小企業に限られ、今後も従来型の間接金融中心の構造に変化がないことを指摘した。このようななかで、大企業や米国企業にみられるように、資金調達力強化戦略の切り札は「情報の非対称性(不完全性)」の問題がなく、金融環境に左右されない内部留保による自己金融力の強化であり、このような自己努力が今最も必要とされている戦略といえよう。

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