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EUにおける商業調整の現状と課題

  • 地元商店が集積する街の中心部商店街が衰退していく現象は、日本のみならず欧州主要国でも見られる共通の問題である。こうした流通の現状に関してEUでは、大規模小売店舗(大型店)の出店規制と日曜営業規制が焦点になっている。この2つの規制は、程度の差こそあれEU主要国のどこでも行われており、中小商業に大きな影響を与えているが、本稿では大型商業施設への対応について、EUで対照的な様相を呈しているフランスと英国を中心に比較検討する。EU主要国は、いかなる理念で商業調整、立地規制を行ってきたのか、また行っているのか等基底に流れている思想を探る。
  • EUにおいて中小企業が商業に占める割合は、どの国でもほぼ同一であるが、中小企業内部の規模階層を見ると、フランスやイタリアでは、従業員0~9人規模企業の割合が、それぞれ93.2%、97.6%とドイツ、英国に比べ著しく高い。このことはフランスやイタリアの商業は小規模零細色が強く、これらの規模の商業でも存立できる社会的背景の存在が示唆されている。
  • 大規模な商業施設の設置に関し、EUレベルでの整合性のある法制は存在しない。補完性の原則によって、各加盟国は欧州連合条約が保障する設立の自由及びサービスの自由な提供という共同体原則を尊重しながら、各国が独自に調整を行っている。商業調整に関する各国の法制は、国により、また同一国であっても地域により、非常に異なっている。
  • フランスでは、小規模の、特に中心市街地の独立商業者を大規模流通業者の無秩序な増加から守るため1973年12月制定された所謂ロワイエ法以降も、大規模流通業者の恒常的な増加が見られた為に一段と大型店規制を強めたラファラン法(1996年7月)の制定を見ており、その結果1996年以降は、大規模小売店の増加が鈍化している。 然し、こうしたフランスの法規制は、EU条約等に違反していると問題視され、現在政府は是正に向けた検討をすすめている。
  • 英国では、食品小売市場は過去5年にわたり上位集中が続いて寡占状態にあり、新規参入や拡張が極めて困難になっているが、商業施設に関する如何なる規制措置も用意されていない。小売店舗の出店を直接規制する法律はないために、都市計画のために土地利用を規制する都市・農村計画法を根拠に商業調整が行われている。大規模小売店舗に対する規制は可能であるが、それは公正な競争確保の観点から、或いは都市計画の観点からの規制されるものであって、既存小売店を産業政策の観点から商業調整しようとするものではない。
  • ドイツでは東西ドイツの統一以降、大規模流通業の顕著な増加が見られ、ここ数年来、200㎡未満の小規模商業数は、スーパーマーケットやドイツ統一以降益々存在が大きくなっているハイパーの影響で、減少の一途を辿っている。大規模小売店を規制するのは都市計画の観点からの連邦法であり、直接規制する法制は採っていない。すなわち、商業施設の設置を規制するのは、一つは国土整備に関する連邦法および建設に関する諸法令によってであり、他の一つは、州の地域振興計画等によって明確な対応策を示すことによるものである。
  • イタリアでは、小売業の競争を推進し近代化を促進するため、1998年3月に施行されたベルサーニ(Bersani)法で規制されている。イタリアでは特に大規模店舗参入に対する政治的抵抗が強く、小売業界における集中率は他のEU主要国に比べ非常に低い。
  • EUにおける商業調整には異なる大きな立場があり、理念では英国を典型とする市場重視主義VSフランスを典型とする社会的経済重視主義が、規制類型では英国およびドイツの社会的規制VSフランス及びイタリアの経済的規制、及び双方を併用する立場が存在する。しかしEU主要国が大規模小売店の開設を認可する際には、地域経済に及ぼす影響等の経済要因や、多様な商業形態間の均衡、流通の多元性と地域の近隣商業、中小企業への十分な配慮を求めるなど、フランス、イタリアは勿論のこと、単一認可・社会的規制で商業調整を行う国とされる英国、ドイツにおいても同様の措置が採られ、両者に類似性・共通性が見られる。

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