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調査研究論文の要旨

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ビジネス教育と中小企業

  • 本論はビジネス教育と中小企業を主テーマとしている。現在の大学・大学院等の高等教育機関におけるビジネス教育が、とりわけ中小企業向けを意識した場合にどう機能しているかというのがもっぱらの関心である。
  • ビジネス教育の根幹をなす経営学の最大の問題は、それが実践科学の地位を標榜しすぎることである。科学と言う限りにおいては、条件や与件を同一にするならば、結果は等しく一致するものでなければならない。 しかしながら経営学においては、必ずしも再現性・再帰性が保証されないことが悩ましい。
  • このように経営学が真理の迫究という点であまり期待が持てないとすれば、残るのは方法論、すなわち分析の枠組みの理論化である。 そうして演繹された定説が科学的思考の産物と認識されれば、それを導いた方法論は科学的方法論として認知されることとなる。
  • 学究と実務家の間に本質的な知的レベルにそう大きな差異がないとすれば、経験科学である経営学において実務的経験は何より貴重であるはずだ。理論的研究においても、ビジネス経験十分な実務家教員とビジネス経験を持たない純粋教員では、前者に一日の長があると考えることは決して無理ではないと思われる。
  • また近年、学歴ロンダリングということが問題視されている。こうした学歴ロンダリングは、「大学学部卒→大学院進学」というルートに加えて、「高卒→大学院進学」というコースも可能とする。この場合、文系とりわけ経営大学院においてそうした対応の取られることが多いであろう。
  • 学歴ロンダリングの横行によって、大学院学生の基礎学力が近年極端に不足するようになっており、 場合によっては学部学生より学力が低いという、俄かには信じがたい事実も報告されている。
  • 大学学部及び大学院におけるビジネス教育においては、経営戦略論と経営管理論の仕分けを明示的に行うべきである。 しかし現状ではそれが十分には出来ていない。 とりわけ学部におけるビジネス教育では、経営戦略論を教えることは極めて難しい。
  • 経営管理論は経営制度すなわちある程度成熟し、確立した企業活動の実際を学ぶことであり、ここには大きな意義が認められる。 下手に経営戦略論を学ぶよりは、経営管理論の方がビジネス教育においては効果が大きいというのが、筆者の見解である。
  • 中小企業においても大企業においても今日では、内部的に社員教育を行うインセンティブが薄れてきている。 だが社員への最低限の教育は必要である。したがってこうしたところに教育機関の出番があると見られる。
  • 問題は、そうした教育機関とりわけ大学が、企業の期待に十分に応えられるようなビジネス教育の体系を提供出来るか否かということである。
  • 翻って中小企業では、大学の専門知識より、「一般的な教養・常識」へ期待するところが大きいということだ。ビジネス系学部では、経営学それも経営戦略論などの、実務家にとってもなかなか難しい科目を粛々と講義する場面が多い。しかしながら、大学がこれまで連綿と提供し続けてきたカリキュラムと、中小企業が期待するカリキュラムではこのようにギャップが大きいことに格別の注目を要そう。

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