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調査研究論文の要旨

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日本のイノベーション・エコシステムに対するベンチャー・ファイナンスの課題

  • 日本の起業に関する各種の指標は世界的に見て最低水準で推移している。これは、リターンとの兼ね合いでみると、「起業」のリスクが高いとの認識が浸透しているためと思われる。しかし、日本の今後の経済発展、競争力の維持・強化、雇用の創出の観点からは、起業活動を先導するイノベーティブなベンチャー・ビジネス(VB)の輩出を促進する環境(イノベーション・エコシステム)の整備が急務である。
  • 「イノベーション・エコシステム」はVB、ベンチャー・キャピタル(VC)、大企業、大学等で構成され、オープン・イノベーションと起業家を連続的に再生産する「生態系」「システム」である。VBとVCに加え、その他のプレーヤーも役割を果たさないとベンチャー・ファイナンスは円滑に機能せず、エコシステムがイノベーションを生み出すことが困難になる。
  • 有識者・実務家は、①日本でのイノベーション・エコシステムの萌芽とVB,VCのグローバル化、②エコシステムの課題(産学連携のマネジメント・モデルへの転換、NIH問題(R&Dの自前主義)の克服、起業家の教育とメンタリング)、③VC投資の課題(シードまたはアーリー・ステージのVBへの消極的姿勢、ハンズ・オフで少額・単発の投資スタンス、新規株式公開(IPO)偏重のエグジット)、④VCがキャピタリストを育成できるような人事・報酬制度への変更の必要性、等を指摘している。
  • 日本のVC投資を国際比較すると、総額とVB1社当たりへの投資金額が少なく、年金基金からVCファンドへの出資比率は低い。エグジットとしてのIPOの件数は、リーマンショック後の低迷から持ち直しつつあるが、IPOまでの年数は米国に比べて長い。日本のVCは収益率が低く、近年アジアへの投資を増やしている。一方、海外に本社を設置した日本人経営のVBの資金調達が増えている。
  • 米国では、投資契約に諸条項を盛り込んだ種類株式によって、VCはVBをハンズ・オンで指導・監督しつつ、経営目標の達成を条件として適切な時期に必要額だけをVBに投資する段階的投資が一般的で、VB・VC間の情報の非対称性とエージェンシー問題が緩和されている。日本のVCでは段階的投資が漸く進み始めたところであるが、段階毎の平均投資金額が海外に比べて少ない。
  • 近年、米国では、VBの普通株主(原告)と種類株式によって段階的投資を行ったVC及びVCからVBに派遣された取締役等 (被告)の間で法的紛争が生じ、注目された。日本でも種類株式によるVC投資が増加し、ハンズ・オン投資の促進には、VCからVBへの取締役の派遣が今後一層重要となるため、同種の法的紛争が生じた際の判断基準を明確化しておくことが必要であろう。

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