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「企業の社会的責任(CSR)」に関する研究
-中小企業の経営理念と「企業の社会的責任(CSR)」に関するケーススタディ-
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7社(製造業4社、非製造業3社)に社是・社訓・経営理念(以下では、「経営理念等」と言う)とCSRに関してインタビューを実施した。
- 各社とも経営理念等で、(当然のことながら)本業を展開する上での心構え、あるいは規範を説いており、本業の推進を社会的責任と考えている。
- 業歴の長い企業での経営理念等の作成・改廃について、創業時に作成されたものを堅持しているケース、追加を施したケース、歴代経営者の規範を事業環境の変化を踏まえて明文化したケース等、さまざまなケースがある。
- 社員が集合する場(朝礼等)での唱和、 あるいは経営者による説明を通じて、経営理念等を社内に徹底・浸透している企業が多い。
- 経営理念等に①社会への貢献、あるいは(地域)社会との共存、②従業員への配慮、③顧客志向、④環境保護に関する記載があり、各社のCSRへの取り組みに反映されている(環境保護については、中核的な経営理念等に記載する企業と別途、環境保護に関する方針を制定する企業がある)。
- 自社のCSRについて、本業を通じた地域社会への貢献を強く意識している企業も見受けられている。 一方、「法令を順守し、倫理的行動をとること」について、強く意識している企業も見受けられる。環境保護については、各社とも周辺地域社会との共存や法規制の順守を目的に地道に行っている。大手企業のサプライチェーンに属する企業では販売先からの期待・要請に基づいた取り組みもみられる。
- 地域社会への貢献については、身の丈にあった取り組みが重視されている。一方、経済的な負担を伴う取り組みにも経営者の信条から取り組んでいるケースもある。これらに取り組むことは、(半ば)当然のことと経営者が考えている企業がみられる。 換言すると、CSRが自社の経営を行う上での信条として埋め込まれていることを意味しており、中小企業が有している「ソーシャル ・ビジネス的特性」の一端が垣間見える。
- 経営者の同族で株式の大宗を保有している、または、社外の株主が経営とCSRについて理解を示していることが、 CSRに対する機動的な取り組みを可能にする条件の一つになっている。
- CSRに取り組むに当たっては、公的機関等が実施している支援策を活用しているケースがみられる。現在以上の取り組みが求められる場合には、行政や公的機関の支援が必要との声も聞かれた。