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調査研究論文
中小企業の産業構造に関する調査研究
調査研究論文の要旨
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中小企業の競争力と経営課題
主たる事業分野の競争状況については、「極めて競争が激しい状態」とする中小企業が45.5%、「やや競争が激しい状態」という企業が41.9%となっており、これらを合わせれば全体の9割近い企業は主たる事業分野の競争状況について激しいと認識している。
自社の競争力に対する評価をみると、全体の69.6%の中小企業は現在の競争力に自信を持っているものの、将来については競争力低下を懸念している企業が多くなっている。企業業績との関連では、売上が増加している企業、利益率が高い企業ほど「現在、今後とも競争力に自信がある」という回答の比率が高く、企業業績と競争力の自己評価の間には明確な相関が認められる。また、製品、サービスの内容・性格別にみると、「自社独自の設計・企画による製品・サービスを提供している」企業では「現在、今後とも競争力に自信がある」という回答の比率が33.2%と他のタイプに比べて高く、製品・サービスの独自性が競争力を発揮していく上での重要な要素となっている。
競争力の源泉としては、「顧客ニーズへの迅速 ・柔軟な対応」という回答が58.8%と最も多く、「製品 ・サービスの品質」(33.3%)、「顧客への提案力、問題解決力」(31.5%)、 「営業基盤、アフターサービス体制」(24.5%)、 「ブランド、信用の確立」(21.6%)、「製品 ・サービスの価格、生産コスト」(21.2%)等も上位に挙げられている。業種別にみると、製造業、非製造業とも、競争力の源泉として、顧客ニーズへの対応や顧客への提案力、問題解決力を重視する点は共通しているが、 製造業、 建設業では品質、価格、生産コストが重視され、非製造業(建設業を除く)ではアフターサービス、ブランド、信用、品揃えといった要素を重視するという特徴がみられる。
競争力を支える要因としては、技術・ノウハウの蓄積、従業員の能力発揮、専門・独自分野への特化、情報収集や熟練労働者の確保・育成といった項目が重視されている。業種別にみると、 製造業、 建設業においては「技術・ノウハウが蓄積されている」 や「熟練労働者の確保・育成に努めている」といった回答の比率が相対的に高くなっており、 技術・ノウハウの蓄積や熟練といった面がより重視されていることがうかがえる。
競争力や企業経営に関する懸念材料、課題としては、国内需要の減少とデフレ傾向に対する懸念が大きくなっているが、業種別にみると、製造業・建設業では「原材料価格の高騰」、「海外企業との競合」、「主力取引先の海外移転、調達の海外シフト」といった回答の比率が相対的に高く、非製造業(建設業を除く)では「人材確保」、 「需要構造の変化」といった回答が多いといった特徴がみられる。
競争の激化等に対応して自社が目指す方向としては、既存の分野・市場を深耕していくことを志向する企業が6割を超え、新分野・新市場への進出を図る企業は3割台に止まっている。
今後、 競争力を維持、 強化していくために必要な方策としては、 「人材の確保・育成」 という回答が 79.9% で最も多く、 「財務体質の改善」 (41.6%)、「顧客・ユーザー情報の活用」 (33.1%)、 「製造工程、 業務工程の見直し」(25.3%)、「生産設備、 事業設備の増強」 (19.8%) といった項目も挙げられている。
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