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調査研究論文の要旨

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企業間信用と電子取引

  • 本研究は、企業間信用の近年の動向と電子取引の進展について分析したものである。 企業間信用には、売上債権として売掛金と受取手形が、買入債務として買掛金と支払手形がある。借入金が金融機関から企業に信用を供与するのに対し、企業間信用は企業の取引先から当該企業に信用を供与するものである。また、手形を受取った企業は、その手形を金融機関で割引することで資金の調達ができる。企業間信用は外部からの資金調達の一種であるが、 負債である買掛金、支払手形以外にも、資産である受取手形も割引手形として資金調達が可能であり、中小企業にとっては非常に利便性の高い手段である。
  • 企業間信用の動きをみると、企業が資金不足にあった1980年代には拡大する傾向がみられたが、バブル崩壊後には縮小傾向を辿っている。企業間信用が減少してきたのは、わが国が資金不足経済から資金余剰経済へ移行する中で、経済活動が鈍化し企業の売上が伸び悩んだこともあるが、手形の発行が急速に減少してきたことの影響が大きい。このため、中小企業の資金調達手段として活用が限定されるようになってきた。
  • 手形の減少には、様々な要因が指摘されているが、いずれも手形が紙であることに起因する諸コスト、諸リスクの問題である。これに対し同じ売上債権である売掛金を手形のように資金調達に活用する動きも出ているが、指名債権という性格からその活用手法はあまり普及していない。
  • こうした状況から、手形と売掛金の両方の課題を克服できる新しい制度として電子記録債権制度が検討され、整備されてきた。電子記録債権は、いわば売掛金を手形のように便利な資金調達手段に変えるものであり、手形が減少してきた状況下で中小企業にとっては売掛金という企業間信用による有力な資金調達手段が増えることとなる。ただその前提として電子記録債権が中小企業全般に広く普及することが必要である。
  • 企業間信用は企業の通常の商取引、企業間取引と密接不可分の関係にある。この企業間取引で最近の大きな動きとして、企業間電子商取引(B to B)が成長してきたことが挙げられる。企業間電子商取引の急成長に伴い、企業の商取引全体に占める電子商取引のウェイトも高まってきている。電子記録債権は、手形の減少が著しい中で売掛金などの売上債権を中小企業などの資金調達にも活用できないか、という観点から検討され実現してきたものであるが、電子商取引とリンクすることにより商取引の始まりから決済までを一貫して電子化できる効率的・効果的な仕組みを構築することも可能とみられることもあり、今後様々な展開が期待される。

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