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調査研究論文の要旨

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倒産動向と中小企業の財務

  • 本稿は、バブル経済崩壊後の平成3年度以降の倒産動向について、経済・金融情勢や中小企業の財務内容との関連を含めてとりまとめたものである。
  • この間の倒産件数の推移については、金融システム不安の高まりを受けて平成9年度に急増し、平成13年度にピークに達した。その後平成18~20年度を除き減少が続き、足元平成23年度は平成3年度以降で最少となった。なお、倒産件数の99%は中小企業が占めている。
  • 負債額の推移については、平成12年度にピークに達し、その後平成19~20年度を除き減少が続き、件数と同様に平成23年度は平成3年度以降で最少となった。
  • 業種別に倒産件数の推移をみると、「建設業」は前半(平成3~13年度)急増した。一方、「サービス業」、「飲食業」は後半(平成14~23年度)増加傾向にある。
  • 営業年数別に倒産件数の推移をみると、営業年数の長い先ほど増加してきている。
  • 倒産形態別に倒産件数の推移をみると、「銀行取引停止」の減少、「破産」の増加という傾向が続いており、平成23年度は「破産」が76%に達している。
  • 倒産原因別に倒産件数の推移をみると、「販売不振」は大幅に増加し、「放漫経営」は大幅に減少した。なお、平成21年度以降不況型倒産の割合は8割を超えている。
  • 従業員規模別にみると、小規模企業ほど倒産件数が多いという傾向が続いている。
  • 中小企業の倒産件数は、中小企業向け貸出残高や地価の変動と相応の相関が確認される。一方、経済成長率との相関は弱い。
  • 中小企業の倒産件数は「資金繰り」との相関が強い。そして「金融機関の貸出態度」は相当程度「資金繰り」に影響を与えている。
  • 中小企業の倒産件数と財務内容の相関についてみると、金融不安が高まり、不良債権残高が高水準で推移した期間を除けば概ね財務分析の理論どおりとなっている。
  • 当該期間に理論と合致しない動きがみられた背景には、金融機関が不良債権の早期処理、自己資本比率の改善が求められるなか、与信審査の際に中小企業の財務内容を従来以上に厳しく評価するようになったことがあるのではないかと思われる。
  • 不良債権残高が減少に転じ、中小企業の財務内容も徐々に改善されてきてからは、倒産件数と財務内容との間にはほぼ理論どおりの相関がみられる。
  • 倒産動向は、経済・金融の動き、金融機関を取り巻く環境、金融行政などの影響も受けるが、自社の経営の巧拙が企業の命運を握っていることに議論の余地はない。従って、中小企業が倒産という不測の事態を回避するためには、自社の財務内容の改善に向けて地道に経営努力を続けることが重要である。

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