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調査研究論文
中小企業の産業構造に関する調査研究
調査研究論文の要旨
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成長分野と中小製造業
長期にわたる経済の停滞、海外との競合激化といった環境の下で、わが国の企業は、日本の強みを発揮し、低コスト競争を避けて、広く海外の需要も取り込んでいけるような産業分野への転換が求められている。
少子高齢化、環境・エネルギー制約といった社会的課題な課題に対応する医療・健康関連分野、省エネルギー・新エネルギー分野等において新たな市場の拡大が見込まれている他、航空・宇宙、新素材、電気自動車、環境等の先端、次世代産業分野についても将来の成長が期待されている。中小製造業もその技術力と専門性を活かし、こうした成長分野への展開を図ることが必要であろう。
本調査では成長が期待される分野のうちから、中小製造業に関わりが深いと思われる医療機器、航空機部品、太陽光発電・風力発電等の再生可能エネルギー、蓄電池といった分野を取り上げて、その概要、事業の特性と中小製造業の取り組みの現状と課題等について、具体的な事例を踏まえて検討している。
医療機器分野は高齢者人口の増加を背景に市場の着実な拡大が見込まれ、新エネルギー関連産業では太陽光発電、風力発電、蓄電池等の分野で成長が期待されている。航空機産業も中長期的な市場の拡大が予想されている。
事例企業は既存分野で培ってきた技術、能力を活かし、成長分野に参入を果たしているが、参入に際しては、情報収集や販路開拓・受注活動を行ったり、新たな能力の取得や開発も必要であった。
医療機器、航空機部品に関しては、厳しい安全性、品質管理が要求される。医療機器の場合は薬事法に基づく許可、認証が必要であり、航空機部品では国際的な品質管理システム認証の取得やトレーサビリティ体制の整備が求められる。
航空機部品は長期間にわたる多品種少量生産であり、生産のリードタイムも長いという特徴があり、認証の取得、品質管理のための体制整備、専用機械の導入、工場の新設等の先行投資の負担も大きいが、事例企業では航空機部品以外に柱となる事業を持つことや幅広い分野から受注することによって、事業の安定性を確保している
航空機部品、医療機器、新エネルギー関連といった成長分野は、他分野からの参入も多い上、グローバル化が進む中、太陽電池に典型的にみられるように、製品のコモディティ化や新興国の追い上げの急速な進行、世界の政治経済情勢の変化による需給の大幅な変動といったリスク要因も大きくなっている。
成長分野への取り組みに際しては、大企業や海外企業との競合を避けて、中小企業が取り組めるニッチな分野を探すとともに、他社との差別化によって競争力を高めていくことが重要であろう。
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