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調査研究論文の要旨

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中小企業の雇用吸収力

  • 本研究は、中小企業の雇用吸収力について、その実態や課題を様々な視点から分析したものである。
  • 中小企業は現在でもわが国における雇用の重要な担い手であることは間違いない。しかしながら、近年では、中小企業の雇用には減少傾向がみられるようになってきている。就業構造基本調査により中小企業における雇用の実態を整理すると以下の通りである。
  • 雇用全体についてみると、中小企業は雇用のほぼ2/3を占め雇用の多くを吸収しているが、最近における中小企業の雇用吸収力には陰りがみえ、先行きが懸念される。
  • 中小企業では、正規の職員・従業員は雇用者の過半数を占めているが、雇用者全体と比較すると低水準である。最近では中小企業の正規雇用が減少しており、非正規雇用もあまり増えていない。一方で大企業では非正規雇用が増加している。
  • この5年間の就業異動をみると、中小企業には5割が就業しており、雇用が総じて減少傾向にあるとはいえ、就業異動の受け皿として大企業よりも大きな役割を担っている。
  • 女性についてみると、中小企業では大企業よりも女性雇用者の比率が高い。年齢別にみると、大企業と比較して60歳以上の構成比が高く、逆に20代~40代の構成比が低い。中小企業、大企業ともに高齢化が進んでいるが、その度合いは中小企業の方が大きい。
  • 中小企業の雇用吸収力低下には、中小企業が生み出す付加価値の低迷が影響している。付加価値が低迷する一方で、中小企業の労働分配率は既に高水準にあり引き上げが困難であったことから、雇用の増加や賃金の引き上げができなくなってきたものとも思われる。
  • 今後、わが国では少子高齢化・人口減少により働き手が減少していく。これに対し、女性の労働予備軍を労働市場に呼び込むことや、高齢者の雇用を維持することなどの方策が求められる。加えて、雇用者がより多くの一人当たり付加価値を生み出していかなければならず、そのためには高付加価値産業、成長産業に労働が供給されていくことが重要である。わが国は、女性や高齢者の労働市場への参加と高付加価値化の両方を進めていく必要がある。

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