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調査研究論文の要旨

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ジャパン・ブランドの確立を通じた地域活性化に関する考察(下)
-クラスター的な連携の枠組みの試案と中小企業の役割-

  • 人口減少下の日本では、地域経済の活性化のために「インバウンドのグローバル化」(①インバウンド旅行の推進と②農産物・食料品の輸出)によって海外の需要を取り込むことが重要である。①については海外からの旅行者が他の観光先進国に比べると少ないこと、②については日本より狭いオランダが世界第2位の輸出国であることに注目すべきである。「インバウンドのグローバル化」を進めるためには、外国人から見た日本の強み・独自性であるテクノロジーや環境保護、コンテンツ、安全・安心な社会・「食」等を含む、「生活の質(QOL)」を差別化して対外的にブランド化する必要がある。
  • 「場所」のブランド化を意味する「プレイス・ブランディング」の理論を援用して、本稿では国家ブランドとしての「日本ブランド」と、個々の地域資源だけでなく「地域そのもの」をブランド化した「地域ブランド」を統合した包括的概念として「ジャパン・ブランド」を位置づける。ブランディングは仮説設定、実験、検証を要しスパイラル的な改善を目指す複雑な「プロセス」であり、関係者の協働が重要である。ジャパン・ブランディングに寄与する国の政策としては、「クールジャパン」、地域団体商標制度、JAPANブランド育成支援事業、ブランド観光地域登録制度等、(農商工連携による)6次産業化等があり、改訂日本再興戦略でも、地方でのブランディングの支援が盛り込まれた。地域レベルでも地域資源、地域ブランド認定等の政策があるが、中心的主体たるべき自治体の専門性、指導力、海外需要に対する意識等に課題があり、域内の他の主体との連携・協働の改善の必要性が示唆されている。
  • 「地域ブランディング」の実施主体間の連携・協働を改善・高度化する枠組みとして、産業クラスター論的な思考を導入した「ブランド構築クラスター(BBC)」を提唱する。これは、産業クラスターに関する施策が地域資源活用や地域ブランディングの施策と多くの点で類似性・親和性を有しているためである。BBCの構成主体は、地域内では自治体が中心となり、6次産業化の構成業種や産学官(金)連携の主体、NPOを含むサービス供給者、ローカル・メディアであり、地域外の高度な知的サービス(ブランディング、知財管理等)の供給者やコンテンツの権利者等と提携し、地域ブランディングを行う。国・政府とも機能を分担し連携して「ジャパン・ブランディング」を実施する。BBCの課題としては、①広域連携の体制構築が途上であること、②施策の同質化によるブランディング効果の減殺可能性、③海外需要の取り込みに対する意識の希薄さ、等がある。
  • BBCとジャパン・ブランディング推進への含意には以下のようなものがある。①実務家へのインタビューからは、継続的改善を要する「プロセス」への理解と関係者の協働によるシナジーの創出と海外へのブランディングを通じた国内への波及を目指すべき、②コンテンツ・ツーリズムからは、BBCの構築と広域化により海外を含む他地域からの来訪者が増加することで地域活性化に寄与する可能性がある、③農商工連携による6次産業化はクラスター化と親和性が高く、フード・バレーへの参加者の多様化でイノベーションを促す政策が打ち出されており、この政策には「インバウンドのグローバル化」とブランディングの視点が含まれている。政策の有効性向上のためには、BBCの構築によって他国と差別化することが重要である。中小企業の役割・課題としては、海外目線での商品・サービスの開発・提供、BBC内部でのシナジー創出、「プロセス」としての「地域ブランディング」への理解と協力、人材の育成、及び経営戦略の再構築がある。
  • 加えて、①中小企業を含むBBC関係者間で認識・戦略の共有に基づいて連携・協働すること、②ブランディングの成果が地域全体にスピルオーバー(漏出)することによる非効率を緩和するために政策的支援が必要であること、の2点も重要である。
  • ※(参考2)「ジャパン・ブランド関連の主要な取組みに関する年表」について
    本年表は「商工金融」へ掲載したものを使用しています。
    「商工金融」へは見開きで掲載しておりますので「P76,77」「P78,79」を1対としてご確認ください。

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