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中小企業の競争力と設備投資
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- わが国経済はバブル崩壊後、長期にわたる不況が続き、さらにはデフレ経済にも見舞われた。また先行きは少子高齢化・人口減少社会に向かうことが予想されている。中小企業にとっては、労働者の減少は働き手の減少であり、消費者の減少は需要(売上)の減少につながる。今後、中小企業が付加価値を生み出していくためには、働き手が減少することを前提とすると労働生産性を引き上げていくことが必要となる。
- 本論文では、中小企業の設備投資の推移と、それが付加価値や労働生産性、ひいては競争力の強化にどのように寄与してきたかに焦点を当てた。その中で、設備投資効率と資本装備率の動きや、設備の老朽化の実態など、競争力と設備投資の関係について、中小企業を中心に過去の推移を辿りつつ分析した。
- わが国では過去、企業における3つの過剰(設備、雇用、借入)が大きな課題としてクローズアップされたが、設備に関しては単なる過剰というだけではなく、設備年齢(ビンテージ)の上昇にみられるような老朽化、質の劣化も無視できない問題である。設備投資の低迷は、産業全体での設備の陳腐化、企業の生産性の低迷、競争力の喪失につながる。
- 設備投資効率は改善の方向に向かっているが、設備年齢は上昇してきた後、あまり改善していない。また、資本装備率も改善しない状況にある。中小企業は、古い設備を代替することなく、新規投資を抑制して使い続けているのではないか、ということが懸念され、競争力強化に向けて生産性を高めるような設備投資の活発化が期待される。今後は、ビンテージの低下を図ること、つまりは企業の生産性や競争力を高めるため設備のスクラップアンドビルドを図っていく必要があろう。そして単に過剰設備の整理だけで設備投資効率の回復を目指すのではなく、企業全体の生産性や競争力に貢献できるような更新投資等を進めることが必要である。少子高齢化が進展する中で、わが国が安定した経済成長を維持するには、企業の生産性を向上させるような設備投資が質的にも量的にも求められると思われる。