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調査研究論文
中小企業の産業構造に関する調査研究
調査研究論文の要旨
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英国中小企業の地域経済構造
欧州の中小企業政策・地域開発政策からみた英国の特徴は、起業数が着実に増加していることと、社会的企業の基盤が確立していることである。
英国中小企業の経済構造を国レベルでみると、中小企業の地位は企業数については99%超、雇用数(経営者+従業員)については6割、取引高については5割弱を占めている。企業数については、個人自営業の増加が著しく、中小企業全体の数の伸びをけん引している。近年の粗付加価値の伸びについて中小企業の寄与度が高い。労働分配率をみると低下傾向にある一方、労働生産性の上昇率は大企業を上回っている。ここから、労働への分配よりも資本への分配を優先し、設備投資、R&D投資を行うことによって、付加価値の増加と労働生産性の上昇を実現していることが推測される。業種別にみると、企業数、雇用数では高いスキルを要するサービス関連産業で中小企業のプレゼンスが高い。この背景には、英国政府が欧州の中小企業政策、あるいは地域開発政策を反映して、ICTを活用してスキルの高い起業家・労働者を育成する政策に力を入れていることがある。また、ICT関連のサービス貿易を実施する中小企業が一部で増加している模様である。金融取引については、金融機関借入等の外部資金を導入する企業の比率が低下している。
地域別に中小企業の経済構造をみると、企業数、雇用数、取引高のいずれについてもイングランドが圧倒的に高いシェアを占めている。スコットランドの産業構造は農林水産業に加えて、製造業やその他の産業についてもバランスが取れた構成となっており、カントリー内での経済的な自律性が高い。一方、ウェールズと北アイルランドは農林水産業の比重が高く、産業構造の多様化の面で遅れている。総じてみると、英国経済は、付加価値や労働生産性等、多くの部分でイングランドのシェア、あるいは水準が圧倒的に高く、ウェールズと北アイルランドは格差をつけられている。イングランドの中ではロンドンとその近郊の企業数や雇用数のシェアが高く、個人自営業を中心に企業数の増加が顕著である。これは、この一帯の大企業が、高いスキルが必要なサービスをアウトソーシングすることによって雇用(費用)を抑制しているために、この種のサービスに対する労働需要が高く、関連産業での創業が増加しているためであると思われる。しかし、ロンドンは失業率と低所得世帯人員の比率が高く、スキル毎の労働需給が地域間でアンバランスになっている可能性が示唆されている。中小企業金融の円滑化のためには金融機関への開示が可能な経営情報の拡充が必要であり、政府が広報などで支援していることもあり、地域別にみても改善傾向にある。ただ、政府の施策の認知度はスコットランドでは相対的に高いが、その他の地域では見劣りする。
日本に対する含意としては、①地域活性化の担い手として中小企業を位置づけ、創業促進政策を採ること、②教育制度への起業家教育・職業教育の埋め込み、③多様なステークホルダーの連携の強化とそのための市民意識の醸成等を挙げることができる。
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