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調査研究論文の要旨

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「ヤング報告書」にみる英国の中小企業政策の将来像

  • 英国では、首相顧問のヤング卿により、「ボルトン委員会報告」(1971年)以来となる政府の公式な中小企業に関する調査である「ヤング報告書」が、2012~2015年に4回に分けて公表され、これに基づき各種の政策が実施された。
  • 「ヤング報告書」のキーメッセージは以下のようなものである。
    ①英国経済の土台となる中小企業、特に個人自営業の起業を促進すべきである。
    ②そのために、起業家の候補である学生に対して初等教育から高等教育までの各段階で職業・ビジネスに必要なスキルの教育を産学が緊密に連携して行うべきである
    ③ITの発展により迅速・低コストでハイテクに限定されない事業の起業が可能になった。
    ④起業促進のために金融へのアクセスを円滑化する必要がある。
    ⑤公共調達に対する中小企業の参入機会を拡大する等、政府は個人自営業を含む中小企業がビジネスをしやすくするための環境整備をすべきである。
  • 英国では各種政策の効果もあり個人の起業が急増、ITの活用も寄与し中小企業の労働生産性は大企業に匹敵しており、「ヤング報告書」は「中小企業にとっての黄金時代」と評価した。ただ、個人自営業の成長による中小企業全体での雇用創出が課題である。
  • 日本では、事業承継が進みにくくなっていることもあり小規模企業の企業数と従業者数が減少している。加えて、業歴の長い小規模企業等で経営計画策定の経験が少ないことやIT活用に対する意識の不足等もあり中小企業の労働生産性の低さが課題となっている。
  • 打開策として、英国と同様に起業への政策的な支援が望まれる。具体的には、個人自営業の起業支援、初等教育から高等教育までの各段階でのITの活用を含むビジネス教育・起業家教育の充実とシステム化、大学の経済・経営系学部の関与拡大等による「よろず支援拠点」におけるワンストップでの支援の強化等が今後重要性を増すと思われる。また、近年、ITとの親和性が高いフリーランスが注目されており、シェアリングエコノミーの拡大に伴い増加が予想される。このため、兼業に関する雇用慣行の改革やシェアリングエコノミーに関するルールの整備が必要となろう。
  • 中小企業の雇用創出の観点からは、「企業のライフステージ」の内、「起業(誕生)」「起業(小児期)」から「成長」の段階を順調に辿り、「退出」を余儀なくされるような業況の悪化を回避することが望まれる。「成長」の促進策としては、「後継者人材バンク」のニーズ発掘力の強化と「事業引き継ぎ支援センター」の認知度の引上げ等を通じてM&Aによる事業承継を促進することが重要である。「退出」に至る業況悪化のリスクを早い時期に除去・軽減する方策としては、財務・非財務情報を基に経営者や金融機関・支援機関等が企業の状態を把握し対話を行うためのツールである「ローカルベンチマーク」の認知度を引き上げ、活用を促すことが重要であろう。

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