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連携・組織活動による中小企業の人材教育
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- 本稿では、人材教育の重要性が一段と高まってきている背景について説明し、中小企業の現状を概観する。次に中小企業組合による人材教育事業の実施状況や今後の取組みスタンスなどを確認する。そして最後に事例を通じて、連携・組織活動による中小企業の人材教育事業の目的、考え方、意義、今後の可能性などについて考察を試みる。
- 中小企業が労働生産性を高めていくためには、人材教育に積極的に取り組み、人的資源の「質」の向上を図る必要がある。また、優れた技術やノウハウを後世代に伝承していくためにも長期的・継続的な視点に立った人材教育が必要不可欠となってくる。
- 6割を超える中小企業は「人材の確保、育成」を重要な経営課題とみている。しかし、中小企業は経営資源に限りがある。また費用対効果の観点からも個社による対応には限界があり、人材教育への取り組みは十分とはいえない状況にある。
- 現在中小企業組合が実施している事業をみると「情報の収集・提供」、「従業員の教育・訓練」は大きなウエイトを占めている。また、「従業員の教育・訓練」は、今後組合が重点的に取り組みたいと考えている事業の最上位に位置づけられている。
- 規模の利益の実現や経営資源の補完による効果が見込める場合は、連携・組織活動により人材教育事業に取り組む意義は大きい。また、企業の枠を超えてともに学ぶことにより人的なネットワークが形成され、離職の抑止力となる。さらに各人の視野を拡げ、人的資源の活性化にもつながるとみられる。
- 中小企業がコアとなる強みを維持・強化していくためには、各社がOJTによる地道な人材教育に取り組む必要がある。一方では、企業を取り巻く環境の変化に適応していくために、常に新しい知識を習得していく必要があり、OFF-JTの重要性が高まってきている。中小企業が連携・組織化のネットワークを活かすことで、こうした共通性が高い教育訓練に積極的に取り組むことを期待したい。