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調査研究論文の要旨

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シェアリングエコノミーによる中小企業の生産性向上

  • シェアリングエコノミーは、個人(供給者)が所有する物的資産や人的資産を他の個人(需要者)と共有する経済活動として生まれ、現在は企業間の取引にも及んでいる。取引のマッチングには多くの場合モバイル機器が用いられ、日本でも普及が進みつつある。この背景には、ICT(情報通信技術)の急速な発展に加えて、類似した事業を行う既存企業に比べて規制が厳しくない分野で、取引を仲介する事業者であるプラットフォーマーが低コストで事業を展開できることがある(規制裁定)。
  • 経済的効果としては、ミクロ的には遊休資産の稼働により供給者の生産性が向上する一方、マクロ的には既存企業の資産が部分的に遊休化することにより生産性向上の一部が相殺される。また、プラットフォーマーの投資増に伴い生産が増加するが、供給者と需要者の大量の情報がプラットフォーマーに集まるため、マクロ的には寡占化が進み労働分配率が低下する可能性がある。副次的効果としては、環境保護への寄与、公共サービスの効率化、ソーシャルキャピタルの醸成、個人企業の起業促進等につながる可能性がある。
  • ケーススタディからは、①プラットフォーマーとしては、斬新なアイデアを迅速に事業化し複数のサービスでシナジー効果を目指す、②供給者としては、基本的には「副業」として取り組む、③需要者としては、起業家・既存企業ともに「アセットライト(資産を極力持たない)」な経営に役立てる、等の含意が導出された。
  • なお、需要者の安全の侵害や第三者の生活環境の破壊、プラットフォーマーによる個人情報の独占等の問題が発生しており、シェアリングエコノミーの健全な発展を目的として規制が強化されつつある。このため、プラットフォーマーが享受してきた規制裁定のメリットは今後縮小する可能性が高い。中小企業はこうした点も念頭に置いて、ビジネスモデルへのシェアリングエコノミーの導入を検討し、生産性向上を目指す必要があろう。

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