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調査研究論文の要旨

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<地域産業と中小企業①>富山のくすりを支える中小企業のダイナミズム

  • わが国経済における製造業の経済的地位は、都市圏を中心に大幅に低下している。こうしたなか富山県では、中小企業の健闘に支えられ、製造業のパフォーマンスは比較的良好である。
  • 富山の売薬業は300年以上の歴史を持ち、地域経済を牽引してきた。また、売薬で蓄積された資本が銀行や電力等の経済を支えるインフラ構築に寄与した。
  • 現在富山県は工業集積県となっており、ものづくり産業への依存度が高い。なかでも医薬品は、製造品出荷額等の約15%を占めており、重要な地位を占めている。
  • 医薬品業界の動向をみると、川上から川下にかけて大きな環境変化に晒されている。
  • こうしたなか富山県の医薬品生産金額は増加傾向が続き、全国第1位となった。委受託製造の完全自由化や、ジェネリック医薬品の利用促進政策等の医療関連行政をめぐる変化を追い風にすることができたということである。
  • 製造形態別にみると受託製造が急伸している。その要因としては、①技術力の高さと多様性、②品質管理能力の高さ、③幅広く厚みのあるサプライチェーンの存在、などが挙げられる。
  • 中小企業の取り組み事例をみると、それぞれビジネスモデルは異なるが、地域内の集積のネットワーク、これにより生み出される情報等を有効に活用して、環境変化に柔軟に対応している様子が窺える。
  • 富山県の医薬品産業の競争力の源泉となる集積内の経営資源は、継続的な行政・業界団体のサポート、教育研究機関の充実、情報ネットワークの形成等により育まれたと考えられる。
  • また、中小企業の取り組みが、集積の多様性を拡げ、集積内に新たな知見や経験の蓄積をもたらし、ネットワークを通じて情報等の共有財産を豊かにしているとみられる。富山の医薬品産業の躍進の陰で中小企業が果たしてきた役割は軽視できない。
  • 地域を基盤とする中小企業が、集積のメリットを活かしながら環境適応力に磨きをかけ、富山の医薬品産業の発展に貢献していくことを期待したい。

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