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調査研究論文の要旨

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新型コロナウイルス感染症の拡大と中小企業の財務・収支

  • 2020年のわが国経済は大幅なマイナス成長となった。こうしたなか金融面を中心に多種多様な公的支援がなされており、中小企業の資金繰りを支えている。
  • 2020年の倒産件数は前年を下回ったが、負債総額1千万円未満の件数は二桁以上の増加率となった。また新型コロナウイルス関連倒産が倒産件数全体の1割強を占めた。
  • 2020年は中小企業、大企業ともに大幅な減収減益となり、コロナ禍は規模を問わず大きな影響を与えている。
  • 借入金、現預金の推移をみると規模に関わらず増加しており、資金繰り悪化に備えて借入により現預金を確保したものと推察される。いずれも中小企業よりも大企業の増加率のほうが大きい点は注目される。
  • 売上高経常利益率、損益分岐点比率の動きをみると規模が大きいほど悪化している。しかし中小企業の損益分岐点比率は大企業よりも15%ポイント以上高く依然として規模間格差が顕著である。
  • 中小企業の自己資本比率は若干低下したが大企業よりも低下幅は小さかった。これに対して借入金を分子とする指標、現預金を分子とする指標は規模に関わらず上昇した。前者は大企業のほうが、後者は中小企業のほうが上昇幅は大きかった。
  • 資金調達スタンスをみると、中小企業は決済資金確保、大企業は危機に備えつつも将来を見据えた設備投資に重心が置かれていたと推察される。 その背景には財務面の基礎体力の違いがある。有事には企業の耐久力の重要性が白日の下に晒される。
  • 業種別の付加価値増減率をみると大企業のほうが格差は大きい。ただ減益業種は中小企業のほうが多く、特に減益率の大きい「宿泊業」、「飲食サー ビス業」、「娯楽業」の財務・収支構造をみると、「宿泊業」はとりわけ減収局面での抵抗力が弱い。
  • 中小企業は今回の危機で明らかになった自社の弱点や課題を克服するための具体策を検討することを忘れてはならない。その際に自社の財務・収支を分析しその構造を明らかにし、数字として可視化して客観視する意義は大きいと考える。

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