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中小企業の人材活用
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- 中小企業の正社員の雇用管理区分は総合職に傾斜する大企業と異なり、一般職や職種限定職などが比較的多い。中小企業では区分別の待遇や昇進機会の違いは小さい。また、中小企業の人材配置はスペシャリスト志向が強く、大企業がゼネラリスト志向であることと対照的である。
- 処遇制度では中小企業は年功重視型・職務内容重視型の傾向が強い。非正規雇用の活用については、中小企業では非正規雇用に基幹的業務を任せる傾向が強い。
- 人材育成面では中小企業は大企業より長期的視点に乏しい。人材育成の中心的手段であるOJTへの取り組み姿勢も大企業より弱く、能力向上も個人任せにする傾向がある。育成に関連した人繰りの問題や育成する側の能力・意識の不足は規模に関わらず課題であるが、特に中小企業では教育を受ける側の意欲や企業の取り組み姿勢に問題が多い。
- 従業員規模別にみて「仕事全体への満足度」に大きな差はない。処遇制度別には年功重視型の企業での満足度がやや低い。「仕事全体への満足度」は「仕事の内容への満足度」の影響が大きい。
- 好業績の中小企業は、新卒を採用し長期育成する傾向があるが、管理職の中途採用にも積極的である。また、個人のキャリア形成支援や高齢者の活用にも積極的である。非正社員の基幹化や正社員転換も好業績企業の方が実施する割合が高い。中小企業に多い年功重視型の処遇制度は業績に結びつきにくいが、成果・業績重視が有効ともいえず、運用には工夫が求められる。
- 雇用形態や職種を超えた「全員参加型の事業推進が可能」であることや「スペシャリティを持った従業員が能力を発揮しやすい」といった特徴が中小企業の強みであり、「仕事の内容への満足度」に繋がっている可能性がある。中小企業では年功重視や一般職正社員の存在など日本的経営の流れをくむ人事制度を持つ企業が比較的多いものの、それを硬直化させないような柔軟な制度運営が行われている。中小企業はこのような強みを生かしつつ、大企業に見劣りする人材育成にもより力を注いでいくことが必要であろう。