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マクロ経済の動向と中小企業の財務
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- 本稿では一つの試みとして倒産動向を媒介させることで、2000 年度から 2020 年度までのマクロ経済動向と中小企業の財務の関係性について考察を試みる。
- 分析の手順は、まず倒産動向と関連性の強い景況関連指標を探索し、次に倒産動向と関連性の強い中小企業の財務指標等を探索する。そして最後に探索の結果選出した景況関連指標と中小企業の財務指標等との関係などについて考察を試みる。
- 2000 年度から 2020 年度までのわが国の実質 GDP 成長率は年平均+0.4%とほぼゼロ成長となり、金融環境は緩和基調が続いている。
- GDP、景気動向指数(CI)、日銀短観業況判断 DI と中小企業の倒産件数の関係をみると、最も相関が強いのは実質 GDP で、日銀短観業況判断 DI がこれに次いでいる。
- 経済対策等公的支援の GDP以外への波及効果の有無や大きさはその内容に左右される。
- 倒産の自己増殖作用は限定的でありそれ程大きくはないと判断される。
- 中小企業について9種類の財務指標等と倒産件数の関係をみると、最も相関が強いのは自己資本比率で、以下当座比率、負債資本倍率、損益分岐点比率、EBITDA 有利子負債倍率の順に続いている。
- 総じて直近の財務指標等のほうが倒産件数との関係が強い。仮にタイムラグがあったとしてもそれ程長くはないと考えられる。
- 倒産件数との関連が強い上記の財務5指標はいずれも実質 GDP と強い相関がある。最も相関が強い指標は EBITDA 有利子負債倍率で、以下損益分岐点比率、自己資本比率、負債資本倍率、当座比率の順となっている。
- GDP の年度データの公表時期は翌年度となることから平時については期中の実質 GDP四半期データを確認することで、早めに財務の変動を把握できる。有事の際には景気感応度の高い日銀短観業況判断 DI が有用である。
- マクロ経済の全体像とその大きな流れを鳥瞰し、自社の財務に与える影響について考察することは中小企業にとっても経営の視座を高めていくことに資する。