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自動車のEV化による中小サプライヤーへの影響
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- 世界的な環境問題への意識の高まりやディーゼル不正問題への対処を新たな成長戦略としたことを背景として、EV化の潮流は不可逆となったといえよう。
- 2015年に締結されたパリ協定は、温室効果ガス排出削減等のための国際的な枠組みとなった合意で気候変動対策の転換点となり、EU、米国、日本などが2050年、中国が2060年までにカーボンニュートラルを達成するとの目標を示した。
- 自動車関連の政策目標では、EUと米国加州が2035年でZEV以外の販売を禁止するが、それ以外の国は電動化中心の目標で内燃機関が一部残り、事情の違いから目標にばらつきがある。完成車メーカーにおいても欧米はEV目標比率が概して高く、日本では電動化が中心という特徴がみられる。
- 自動車産業におけるEV化の最大の変化はエンジンやトランスミッションが不要となりモーターとバッテリーに置き換わることである。このインパクトは非常に大きく、エンジン部品等が不要となるだけでなく、エンジンを中核技術とした完成車メーカーを頂点とするピラミッド構造が大きく変化する可能性があり、部品を供給する中小サプライヤーは取扱製品やサプライチェーンの変化への対応が不可欠となろう。
- EV化の流れは不可逆となるが、一方ですぐにエンジンが不要とはならず、ある程度の移行期間があるなか、ケーススタディとし中堅・中小企業8社に対しEV化の影響や対応についてインタビューを行い、考察を試みた。
- インタビューの結果は大きく2つに分類され、EV化の影響を比較的強く受ける企業では技術転用や新市場開拓に取り組んでいるほか、EV化後も残る部品の受注拡大に注力するなどの対応を行っているのに対し、EV化の影響がそれほど及ばない企業では、主として既存技術の深化に取り組んでいることが分かった。
- 日々の業務に追われ将来を見通す余裕がない、経営者が高齢で後継者がいないなどの理由で何ら手を打つことなく現状維持の企業も少なくないと思われるが、EV化はスピードを上げ着実に進んでおり気が付いた時には仕事がなく、苦境に陥ることになりかねない。そうした企業がEV化の対応を模索する際に本稿が参考になれば幸いである。