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サービス産業における人材育成について-対人サービス職の感情労働への理解-
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- 日本のサービス産業(農林水産業、鉱業、製造業、建設業を除く第3次産業)はGDPの70%
以上を占めている。第3次産業における中小企業のシェアは企業数77.1%、従業員数48.6%
であり、サービス産業の大部分は地域の中小企業が担っている。
- サービス産業では、「人」が担う業務が中心であり、従業員の「育成」は不可欠である。日本
において第3次産業に従事する中小企業の従業員数が約50%にも関わらず、サービス産業に
おける離職率は高く、長期的な視点からの育成が難しいという実態がある。
- 労働は、①肉体労働、②知識労働、③感情労働の3つのカテゴリーに分けられる。肉体労働
は機械に、知識労働はAIに、取って代わられる方向に進んでいると言われており、「人」が
行う労働は感情労働が主なものになるという。
- 現在、感情労働の割合が一番大きいのは「サービス産業」と考えられている。サービス産業
従事者の主な業務は直接顧客と接することであり、その際に相手の感情に合わせた対応が求
められるためである。
- 本論文では、感情労働とはどのようなものか、また、感情労働がサービス産業従事者にどの
ような負担をもたらすかについて先行研究を確認する。併せて、感情労働の負担を軽減する
ための対応策について確認する。
- 中小サービス産業の経営者の多くが、従業員の定着に向けてさまざまな工夫をしており、そ
れら企業では、若手従業員が定着し、また、着実に成長している企業もある。
- 事例企業では、その規模(大企業に比べて規模が小さく、従業員数が少ない)を強みとした
対応を行っている。また、さらに小規模な場合は、業種や地域で協力して取り組むなどの工
夫で、人材の定着・育成を図っている。
- 成長が見込まれる社員の新規雇用、また、新入社員のみならず、中堅社員や幹部社員の育成
など、個々の中小企業が全てに取り組むことは負担が大きい。しかしながら、サービス産業
の従業員が「感情労働」を行っているという認識を持つことは、従業員の定着に向けた具体
的な対応策を考えるきっかけに繋がると考える。