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特定地域づくり事業協同組合制度の現状と課題ー事例研究を通じてー
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- 本稿では、組合事業が停滞し組合数が減少するなか、新たに創設され、異業種を主体とする「特定地域づ
くり事業協同組合制度(以下、特定地域づくり制度という)」の現状と課題を事例先へのインタビューを通
して明らかにし、中小企業組合の新たな役割への示唆を行うことを目的とする。
- 中小企業組合数はピークの58千組合から35千組合まで減少したが、一方で新規設立状況は外国人技能実
習生受入事業や特定地域づくり制度創設などに起因し、異業種組合が増加しており、その割合は約半分に
まで増加した。このことは、中小企業のニーズや政策の変化が背景にあると思われる。
- 特定地域づくり制度は、人口急減地域で地域産業の担い手を確保するための特定地域づくり事業(=マルチ
ワーカーに係る労働者派遣事業等)を行う事業協同組合に対して財政的、制度的な支援を行うもので、地域
づくり人材の確保及びその活躍の推進を図り、もって地域社会の維持及び地域経済の活性化を目的とする。
- 2020年に創設以降、全国各地で特定地域づくり制度を使った組合設立の動きが広がるなか、組合を受け皿
にすることが、地域の社会課題解決にとって非常に有意義ではないかと考える一方、手厚い財政支援の制
度のため、本制度に持続性があるのか、また自立には何が必要かといった問題意識を持った。
- 先行研究のサーベイにより、特定地域づくり制度は、持続可能性について未知数であることや、未知の課題
に対し柔軟な対応が求められることが明らかとなったが、方法論に言及する研究はなかった。事業協同組合
の特性や持ち味を生かすことができれば、持続可能で柔軟な対応が可能ではないかという仮説を設定し、
検証のため特定地域づくり制度認定組合や県中央会へのインタビューを行った。
- その結果、特定地域づくり制度の現状や課題として、①中小企業施策の受け皿機能や相互扶助の精神が発
揮され、地域特性に合わせた柔軟な対応もあり制度の浸透も進むが、地域ごとの差は大きく、一層の政策
浸透には地域ごとに創意工夫を促すような仕組みが必要であること、②県中央会等の関係機関による柔軟
なサポートや新たなネットワーク化の動きがあること、③組合員等の協力を得ながら独自事業により補助金
依存度を下げ持続可能な運営を目指している組合もある、ことが明らかとなった。以上から、地域ごとの特
性はあるものの、事業協同組合の特性や持ち味を生かせれば、持続可能で柔軟な運用が可能ではないかと
の結論に至った。
- 公共性と営利追求の中間的な要素をもつ課題の解決を事業協同組合の新たな役割として捉えることで組合
の活性化につながり、さらに政策を掛け合わせることで、関係機関や地域を巻き込みながら、地域活性化の
起爆剤やツールとなり得るものと考える。
- 地域特性を考慮した仕組みの具体化というところまでは本稿では明らかにできておらず、今後の課題としたい。