-
概要を動画でご覧になりたい方はこちら(著者が8分程度で紹介します)
全文をご覧になりたい方はこちら(PDF)
-
地域ブランド化の推進による中小企業組合の活性化
ー中小企業組合の非価格競争力の視点からー
-
- 本稿では、非価格競争力の視点から、地域ブランド化の推進が中小企業組合の行う共同事業(共同検査や共同販売促進等)を通して、組合の活性化にどのような効果があるのかを、地域団体商標登録を持つ協同組合へのインタビューを通して明らかにし、実践的なインプリケーションを示すことを目的とする。
- 地域創生が政策的な重要課題となる中で、組合の新たな役割として地域ブランドのような非価格競争力のある事業への期待が高まっている。しかし、地域ブランド化への取り組みは難易度が高く、地域団体商標のような保護制度に登録しても、単なる文字商標で国の品質保証もないことから、①品質のばらつきや②ブランディングのノウハウ不足等により、ブランド化の効果が十分に発揮されず、組合への求心力や活性化につながらないのではとの問題意識をもった。
- 地域ブランドや地域団体商標に関する先行研究からは、「商標・地域団体商標登録=ブランド化」ではない、ブランドづくりの手段として考えるべきである(特許庁,2023)。また、地域ブランドは、地名に代表される「地域空間ブランド」と製品・産品などの「地域商品ブランド」に分かれるが、それぞれが別々のものではない。また企業が提供する「ビジネスブランド」と地域ブランドは共通点が多いものの、①特定主体が支配できない、②生産量や品質が安定せずブランド内の製品同質性が大きな課題である、③地域という広がりを示すために「差異を内包した同質性(主要な要素がいくつか一致)」が求められるといった相違点があると指摘している(小林,2016)。
- そこで、地域団体商標を活用した地域ブランド化に取り組む中小企業組合の実態と、組合事業活性化との関連について明らかにすべく、ブランド内の品質維持等=共同検査事業と、ブランディング=共同販促事業に着目したうえで、両事業が地域ブランドの浸透を通して組合自体の活性化につながっていくとの仮説を設定した。
- インタビュー結果からは、ブランド・イメージ向上や組合員数の減少が相対的に小さいなど組合活性化に対して一定の効果が確認された。そして、組合員同士では切磋琢磨し競争しながら、対外的には組合として協同しながら取り組み、まさに「差異を内包した同質性」に結び付く内容がみられた。しかし、製品・産品と地域空間が相互に価値を高め合うようなブランディングの実践的ノウハウの不足や、人的資源・資金不足が原因となり、大きな飛躍が図れていないという実態も明らかとなった。
- 裏を返せば、実践的なノウハウや経営資源の充実が急がれるということで、これらの解決のため、先ず組合や組合員の自助努力が必須となろう。しかし、地域ブランドの確立は自助努力では解決が難しい課題も多く、行政なども交えたプッシュ型かつ中長期的な伴走型の支援が不可欠ではないかとの示唆が得られた。