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調査研究論文の要旨

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中小建設業の人手不足と構造問題について

  • わが国の建設工事は民間工事が6割以上を占めその大半は建築工事である一方、公共工事は大部分が土木工事である。建築工事と土木工事は内容が異なるため、大規模ゼネコンを除き、建設業者は民間・公共或いは建築・土木いずれかに特化して対応している。
  • 民間工事・建築工事は公共工事・土木工事より需要の年ごとの振れが大きい。季節的には、公共土木工事の作業は年度後半に集中し、年度半ばに作業ピークが到来する民間建築工事との相乗効果で年度初めに閑散期、年度半ば以降に建設工事の繁忙期が出現する。地域別には大都市圏では建築工事の割合が高い一方、地方で土木工事の割合が高い。
  • 建設工事が請負業者1社で作業が完結することは少なく、他の建設業者に対し、自社で遂行能力のある作業を下請、もしくは遂行能力がない作業を外注することが多い。建築工事では外注取引が、土木工事では下請取引が多く、建設業ではこれら関連業者との連携・バリューチェーン構築が重要である。
  • 建設業の人手不足は人数面の量的な意味でも、技術者や技能者の確保という質的な意味でも深刻である。他業種に先駆けて高齢化が進行し、若年層の採用難から世代交代が進まない。技術者・技能者の不足は個々の建設業者の請負能力や施工能力を低下させる。
  • わが国の建設業許可業者数は減少が続いたが、2019年以降僅かながら増加に転じた。専門業者の増加が主で、元請能力のある一式工事と一部専門工事の業種では減少に歯止めがかからない。構造的に外注や下請取引を多用する建設工事のバリューチェーンのバランスが崩れ施工能力確保に不安を残す。また、地方における専門業者数の不足は地方の工事推進の阻害要因となる恐れがある。
  • わが国の建築物や住宅、インフラの老朽化が進み、補修・建て替え需要として建設需要を押し上げている。
  • 2010年代半ばから建設工事の施工高は受注高を下回って推移し、未完工事高は積み上がりの一途を辿るなど、施工能力不足の弊害は既に表面化している。
  • 建設業における不採算取引の割合は低下傾向にあるが、足元の建設コストの持続的上昇が採算を圧迫しており、受注の阻害要因となっている。
  • 建設業においては人手不足問題が注目されるが、その結果としての施工能力低下が根本的な問題であり、業界の施工能力向上を見据えた人手不足対応が望まれる。課題解決は企業が取り組むべき対応と、業界全体もしくは政策対応として取り組むべき対応を分けて考える必要がある。

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