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中小企業の従業員エンゲージメント
―従業員個票データによる特徴分析―
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- 働きやすさ、居心地の良さなどから生じる職場への肯定的感情を表象する「従業員エンゲージメント」を切り口として、中小企業においてそれが高い企業で職場環境や企業文化にどのような特徴があるか、どのような対応・方策が採られているかを個票データに基づいて分析する。
- 先行研究では、企業が従業員エンゲージメントを高めるためには「従業員による発言機会」「心理的安全性」を確保すること、仕事の「要求」(従業員にかかる各種の負担)と「資源」(「要求」への対応能力)のバランスを調整することが重要とされる。
- 企業のフォーマルな対応単独では従業員エンゲージメント向上への効果は挙げにくく、インフォーマルな要素、特に職場の雰囲気と人間関係がどの程度プラスに作用するかがフォーマルな対応の成否を左右する。職場の雰囲気や人間関係においては、上下関係によるタテの関係性とともに、従業員同士のヨコの関係性を円滑にすることも必要である。
- 人手不足は従業員エンゲージメントに深刻な負の影響をもたらす。人員増以外の方策として、個人と仕事の関係性を見極めた木目細かい対応が有効と考えられる。ここでは仕事を割り振る側の裁量というインフォーマルな対応能力が重要である。
- 従業員エンゲージメントとワーク・エンゲージメントには密接な関係性がある。中小企業が2つのエンゲージメントを一体として追及することにより、エンゲージメントの効果を挙げることが期待できる。
- 職種による従業員エンゲージメントの差は大きい。中小企業は大企業と異なり仕事の内容と従業員エンゲージメントの相関性は乏しいが、ある程度の規模になれば異なる職種に従事する従業員を抱えるケースが多くなり、仕事内容の相違によりエンゲージメントの高低が問題化する可能性が高くなる。そのような場合、全職種共通のエンゲージメント向上を図るよりも職種に応じた方策を講じることが望ましい。